長く勤める従業員への労いと感謝の気持ちを込めて贈られる永年勤続表彰金。福利厚生として 広く導入されていますが、給与として所得税の対象となるのか、社会保険において報酬等に含ま れるのか、迷うところです。税務上、社会保険上・労働保険上の取扱いについて整理します。
所得税の取扱い
永年の勤続を表彰して現金や商品券などを支給する場合は、その全額( 商品券の場合は券面額)が給与として課税されます。
一 方 、記念品を渡す場合や旅行や観劇に招待する場合は、次のすべて 満たしていれば、課税する必要はありません。
①勤続年数や地位などに照らし、社会一般的に みて相当な金額以内である。
② 勤続年数がおおむね 10 年以上の人が対象で ある。
③同じ人の 2 度目以降の表彰の場合は、前回か らおおむね 5 年以上あいている。
社会保険の取扱い
社 会 保 険( 健 康 保 険・厚 生 年 金 保 険 )に お いて永年勤続表彰金が報酬や賞与に含まれるかどうかについては、過去の疑義照会の中でも 回答が分かれ、統一的な見解が示されていませんでした 。しかし今 年 6 月 、日本年金機構が事例集を改正しこの点について追記したことにより、実務上の取扱いが明確になりました。
これによると永年勤続表彰金は、金銭や金券、記念品等、いずれの形であっても、少なくと も次のすべてを満たす場合は、原則として報酬 や賞与には含まれず、保険料の対象とする必要 がありません。
①表彰の実施目的が、福利厚生や長期勤務の奨 励である。
(例)リフレッシュ休暇も一緒に付与される場 合などは、福利厚生としての側面が強い といえます。
②表彰の基準は、勤続年数のみを要件として、 一律に支給される。
③社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えて おらず、表彰の間隔がおおむね 5 年以上であ る。
この要件の中に満たさないものがある場合 は、永年の勤続を表彰するものであるという性 質を十分確認した上で、総合的に判断する必要 があります。
労働保険の取扱い
労働保険(労災保険・雇用保険)においては、 「年功慰労金「」勤続褒賞金」は賃金に含まれな いとされています。名称は異なるものの、永年勤 続 表彰金も同様と判断できるため、労働 保険料の対象とする必要はありません。
参考:
国税庁タックスアンサー No.2591「創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591.htm 日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf 厚生労働省「労働保険対象賃金の範囲」https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/dl/1-3-2.pdf