1年の経理をまとめて見直すことは大変な作業です。
そんな時は半年ずつ、経理を見直してみてはどうでしょうか?
これまでの節税策を指摘する最高裁の判決
みなさんはどのような節税策を取られていますか?
相続財産の評価額について争われた4月19日の最高裁判決が波紋を広げています。これまでごく一般的だった不動産を使った節税策で、税務当局から追徴課税などの指摘を受ける可能性があると受け止められたためです。
では今回の裁判で問題となった節税策をみてみましょう。
90代の被相続人は2009年に東京都と神奈川県に2棟の賃貸マンションを計約13億8000万円(土地・建物の合計)で取得しましたが、被相続人は12年に亡くなり、相続が発生します。この時の路線価を基にした評価は約3億3000万円と購入価格を大きく下回りました。
節税策はこれだけではありません。
被相続人はマンションを購入するために、約10億円を信託銀行から借り入れています。相続時に借金があった場合は相続財産を計算する際に、現金や土地などの価値から、借金の分を差し引いてもらうことができます。
これが「債務控除」と呼ばれるルールです。
この債務控除の結果、課税対象となる相続財産は基礎控除(非課税枠)以下となり、相続税をゼロと申告しました。
それに対し、税務当局は賃貸マンションの路線価による評価額が購入価格の30%に満たず、購入額と大きく異なることなどを「著しく不適当」と判断したのです。
相続財産の算定額が「著しく不適当」な場合に国税当局が再評価できるとする例外規定を根拠に約12億7000万円と再評価し、約3億円を追徴課税を求めました。
これまでの節税策
市場で売買される取引価格(実勢価格)に比べて相続税評価額が低くその乖離がケースによって大きいといわれるタワーマンションは、富裕層にとって相続税の節税対策として有用なものとして取り扱われてきました。
この節税(いわゆる「タワマン節税」)については、平成29年度税制改正において、建物の相続税評価額の算定基礎となる固定資産税評価額の算定方法を改正することで、高層階を所有する富裕層についての節税効果が幾分薄らいでいました。
他方、土地の相続税評価額は、通常、路線価方式(倍率方式)による算定となっていることから、実勢価格との乖離は生じたままとなっていました。
このような中、タワーマンションを相続した相続人が相続税申告をするに当たり、タワーマンションの土地の評価について路線価方式により算定したところ、国税側は“伝家の宝刀”によって鑑定価額で評価を行い、更正処分を行ったという事案がありす。
この事案では、相続人側は処分を不服として訴訟を起こし、地裁・高裁いずれも敗訴、最高裁へ上告しました。そこで最高裁はこの上告審を受けて口頭弁論を開いた上で、4月19日に判決を行い、国側の勝訴が確定したのです。
最高裁の判決を踏まえると…
今回の判決は、相続税の申告の中身が、評価通達に基づいて計算されているにも関わらず、それが否認されていることが非常にショッキングな内容です。
土地の価格は、通常路線価で評価し、建物は固定資産税評価額で行います。債務控除を使うことも手続きとしては当然であり、極めて妥当でした。
判決では、時価が路線価を上回るだけでは著しく不適当ではないとした上で、「借り入れにより大幅な評価減が可能な賃貸不動産などを節税を期待して購入する」という対策自体が著しく不適当だとしたのです。
借り入れをして、不動産を取得または建築し、評価差額と債務控除を活用して行う節税は、至極一般的だったにも関わらず、これを牽制する形の判決は、安易な節税を見直す契機となりそうです。