知っておきたい、GAFAとデジタル課税問題 | かなえ経営株式会社(税理士法人トレイス)

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知っておきたい、GAFAとデジタル課税問題

知っておきたい、GAFAとデジタル課税問題

筆者:税理士 佐野 元洋
"中小企業の経営参謀"

はじめに

2019年6月に福岡市で開催されたG20にて、GAFA(ガーファ)などの巨大IT企業の税逃れを防ぐために、「デジタル課税」として国際的な統一ルールを設ける方針が経済開発協力機構(OECD)によって採択されました。

OECDは、1,900名を超える専門家を抱える世界最大のシンク・タンクであり、経済・社会の幅広い分野において多岐にわたる活動を行っている国際機関です。

外務省:経済協力開発機構(OECD)HPより引用

「デジタル課税」という言葉を最近、よく新聞で見かけますが、その課税ルールについて、皆さんはどのぐらい知っているでしょうか?

今までにはなかった課税方式のため、疑問に思う方もいらっしゃると思います。

DXやデジタル化の波が押し寄せてくる昨今を表しているかのような「デジタル課税」。
今回はそんな新しい課税ルールについて解説していきます!

デジタル課税とは?

冒頭でも述べた通り、「デジタル課税」とは、

IT企業に対して、適正に税金を徴収するために設けられる課税ルール

のことです。

GAFAを代表とするIT企業は有形固定資産を持たないため、タックスヘイブン(法人税率が低い国や地域)を利用し、税金逃れを行うことがあります。

そういった税金の抜け道を利用するIT企業から適正に税金を徴収しようということでこの案が作られることとなりました。

GAFAとは?

GAFA(ガーファ)とは、世界を席巻するほど巨大な米国のIT企業、Google、Amazon、Facebook、Appleの頭文字をとったものです。

この4社は非常に大きな会社で、時価総額(2019年1月初頭)がそれぞれ、Google(親会社のAlphabetの時価総額)は37兆円、Amazonが81兆円、Facebookが34兆円、Appleが71兆円となっています。

しかもこの4社に、Windowsなどで有名なMicrosoft社を加えた5社の時価総額合計が、昨年4月、東証一部上場企業全体(2169社)の時価総額を超えたと話題になりました。

これらの企業の特徴は、ネットを活用したサービスを展開しており、非常に大きな多国籍企業であるため、ボーダーレス(国境の境目があいまいなところ)であるということが挙げられます。

GAFAによる脱税

経済のデジタル化が進展する中で、現行の国際課税の原則が十分に機能しなくなっており、GAFAはアイルランドやスイスなどといったタックスヘイブン(租税回避地)を利用し、脱税を行っていたという過去があります。

そんな巨大IT企業による脱税が行われたのは、日本も例外ではありません。

わが国の課税のルールは、「PE(Permanent Establishment:恒久的施設)なければ課税なし」を原則としており、日本国内に支社や支店などの拠点がなければ日本国内での課税が出来ないことになっています。

以前Amazonは、消費者との契約は米国本社で行い、日本法人は物流のみを請け負っていました。

Amazonとしては、日本国内にはあくまで物流拠点としてAmazon Japanを設けているだけであり、日本で直接事業を行っているわけではないという立場を表明していました。

つまり、Amazonは日本にPEが存在しないため、日本に対し法人税を納める義務はないということになります。

そのため、Amazonの日本事業の売上高は2014年の約79億ドル(約8,600億円)にもかかわらず、Amazonが納税した法人税は約11億円でした。

しかし、2018年に138億ドルと1.7倍に増加し、納税額は以前の10倍超になっています。

Amazonの納税額が急増したのは、日本のネット通販事業の契約主体を米本社から日本法人に変更したためです。

以前は、日本法人は米本社の補助的な業務を担当しているとされ、計上する収益も小さかったのですが、日本事業を日本法人が直接担当することで、課税対象の収益が増えたとみられます。

これは、G20など国際的なフォーラムにおいて「デジタル課税」など、GAFAに対する課税方式に対して本格的な議論が行われていることに対応してのことだと考えられます。

日本におけるデジタル課税

「PEなければ課税なし」の課題への対応策として、

多国籍企業が活動する市場国に対して、物理的拠点の有無にかかわらず、新たに課税権を配分することが検討されています。

具体的には、大規模な多国籍企業を対象に、グループ全体の利益のうち市場国の貢献によるものと見なしうる一定割合を、市場国に売上等による定式で配分する方向で議論が進んでいます。

対象は、「自動化されたデジタルサービス」と「消費者向けビジネス」の2種類で、
前者はオンライン広告やクラウドコンピューティングサービス、
後者は家電製品や衣服、化粧品等の販売が該当します。

対象企業の規模に関する具体的な閾値や、利益の配分割合についてはまだ合意が見られていないというのが現状です。

ITに強いアメリカ企業ばかりが「デジタル課税」の対象になる可能性もあり、アメリカ財務省は現在、新たな枠組みの提案をしています。

日本を市場として企業活動をしている以上、日本においても適正に納税して頂きたいですね。

参考サイト:財務総合政策研究所 <特集>デジタル経済と税制の新しい潮流

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