「経営者保証」はずれていますか? | かなえ経営株式会社(税理士法人トレイス)

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「経営者保証」はずれていますか?

「経営者保証」はずれていますか?

筆者:税理士 佐野 元洋
"中小企業の経営参謀"

⑴金融庁調べ

金融庁は、経営者が個人資産で借金返済を保証する「経営者保証」に関する融資の実態調査結果を発表しました。2022年度比で、経営者保証に依存しない融資の割合が13ポイント上昇し47%になりました。これは、金融庁が2022年4月に監督指針を改正したことが影響し、経営者保証を求める手続きを厳格化した結果です。

経営者保証に依存しない融資の件数は、無保証融資が41%増加し、コベナンツなどの代替手段を用いた融資は5.3倍に増えました。

(出典:日本経済新聞2023年12月26日)

⑵経営者保証改革プログラム

経営者保証は、経営の規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、スタートアップの創業や経営者による思い切った事業展開を躊躇させる、円滑な事業承継や早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、様々な課題も存在しています。このような課題の解消に向け、これまでも経営者保証を提供することなく資金調達を受ける場合の要件等を定めたガイドライン(経営者保証ガイドライン)の活用促進等の取り組みを進めてきましたが、経営者保証に依存しない融資慣行の確立をさらに加速させるため、経済産業省・金融庁・財務省による連携の下、①スタートアップ・創業、②民間融資、③信用保証付融資、④中小企業のガバナンス、の4分野に重点的に取り組む「経営者保証改革プログラム」を策定・実行していきます。

①スタートアップ・創業

創業時の融資において経営者保証を求める慣行が創業意欲の阻害要因となっている可能性を踏まえ、起業家が経営者保証を提供せず資金調達が可能となる道を拓くため、経営者保証を徴求しないスタートアップ・創業融資を促進します。

●主な施策

1.スタートアップの創業から5年以内の者に対する経営者保証を徴求しない新しい信用保証制度の創設(保証割合:100%/保証上限額:3500万円/無担保)

2.日本公庫等における創業から5年以内の者に対する経営者保証を求めない制度の要件緩和

3.商工中金のスタートアップ向け融資における経営者保証の原則廃止

4.民間金融機関に対し、経営者保証を徴求しないスタートアップ向け融資を促進する旨を要請

民間金融機関による融資~保証徴求手続きの厳格化、意識改革~

監督指針の改正を行い、保証を徴求する際の手続きを厳格化することで、安易な個人保証に依存した融資を抑制し、事業者・保証人の納得感を向上させることを目指します。また、「経営者保証ガイドラインの浸透・定着に向けた取り組み方針」の作成、公表の要請等を通じ、経営者保証に依存しない新たな融資慣行の確立に向けた意識改革を進めます。

1)金融機関が個人保証を徴求する手続きに対する監督強化

●主な施策

1.金融機関が経営者等と個人保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等に関し、事業者・保証人に対して個別具体的に以下の説明をすることを求めるとともに、その結果等を記録することを求めます。

➡どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか

➡どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか

2.1の結果等を記録した件数を金融庁に報告することを求めます。

3.金融庁に経営者保証専用相談窓口を設置し、事業者等から「金融機関から経営者保証に関する適切な説明がない」などの相談を受け付けます。

4.状況に応じて、金融機関に対して特別ヒアリングを実施。

2)経営者保証に依存しない新たな融資慣行の確立に向けた意識改革

●主な施策

1.金融機関に対し、「経営者保証に関するガイドラインを浸透・定着させるための取組方針」を経営トップを交え検討・作成し、公表するよう金融担当大臣より要請。

2.地域金融機関の営業現場の担当者も含め、監督指針改正に伴う新しい運用や経営者保証に依存しない融資慣行の確立の重要性等を十分に理解してもらうべく、金融機関・事業者向けの説明会を全国で実施。

3.金融機関の有効な取組みを取りまとめた「組織的事例集」の更なる拡充及び横展開を実施。

3)経営者保障に依存しない新たな融資手法の検討

③信用保証付融資~経営者保証の提供を選択できる環境の整備(希望しない経営者保証の縮小)~

1)信用保証制度における経営者保証の提供を事業者が選択できる環境の整備

●主な施策

1.経営者の取組次第で達成可能な要件(法人から代表者への貸付等がないこと、決算書類等を金融機関に定期的に提出していること等)を充足すれば、保証料の上乗せ負担(事業者の経営状態に応じて上乗せ負担は変動)により経営者保証の解除を選択できる信用保証制度の創設

2.流動資産(売掛債権、棚卸資産)を担保とする融資(ABL)に対する信用保証制度において、経営者保証の徴求を廃止

3.信用収縮の防止や民間における取組浸透を目的に、プロパー融資における経営者保証の解除等を条件に、プロパー融資の一部に限り、借換を例外的に認める保証制度(プロパー借換保証)の時限的創設

4.上記施策の効果検証を踏まえた更なる取組拡大の検討

2)経営者保証ガイドラインの要件を充足する場合の経営者保証解除の徹底

●主な施策

1.金融機関に対し、信用保証付融資を行う場合には、経営者保証を解除することができる現行制度の活用を検討するよう経済産業大臣・金融担当大臣から要請。

2.保証付融資が原則として経営者保証が必要であるかのような誤解が生じない広報の展開。

④中小企業のガバナンス~ガバナンス体制の整備を通じた持続的な企業価値向上の実現~

●主な施策

1.ガバナンス体制整備に関する経営者と支援機関の目線合わせのチェックシートの作成

2.中小企業の収益力改善やガバナンス体制整備支援等に関する実務指針の策定、収益力改善やガバナンス体制の整備を目的とする支援策(経営改善計画策定支援・早期経営改善計画策定支援)における支援機関の遵守促進

3.中小企業活性化協議会における収益力改善支援にガバナンス体制整備支援を追加し、それに対応するため体制を拡充

⑶まとめ

上記の改革がこの1年を通して実行され、金融機関の現場にも浸透してきている結果と思われます。

まだ御社の金融機関からの融資についての経営者保証が外されないままになっていましたら、一度金融機関に相談してみましょう!

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