コロナ禍で会社の資金が回らず、役員からの借入が増えているということはないでしょうか?
今日は、役員借入への対応を事例を交えてお話しします。
(1)役員からの借入が増えるとどうなる?
役員からの借入金は、会社側から見ると借入金ですが、役員個人から見ると、「貸付金」という財産です。
つまり、その役員が亡くなられた場合には、相続財産として相続税の対象となるのです。
うちは不動産もないし預金もないから大丈夫と言われる方が多いのですが、会社を経営されている場合に決算書を見ると、意外とこの役員借入金が多額になっていたりします。
(2)債権放棄
役員からの借入金を文字通り、放棄して頂きます。
①手続き
手続きとしては、債権放棄しようとする金額を会社宛に「債権放棄通知書」として通知してもらいます。
弊社では、期末までにその書類が存在していた証拠を残すために公証人役場で、「確定日付」の印鑑をもらっておきます。手数料は700円ですので、700円で公的なお墨付きの証拠が残せるなら安いものだと思います。
②注意点
当期が赤字の場合や欠損金が多額にある場合は、その範囲内で、債権放棄をすることで法人税は発生しません。
しかし当期が黒字である場合や欠損金がない場合に、債権放棄をしてしまうと黒字に上乗せして債権放棄の金額が利益に加算され、その金額にも法人税がかかることもなります。
債権放棄は、あくまでも赤字の年度や欠損金がある場合にしましょう。
また資本金が1,000万円を超えてしまうと、都道府県および市町村への均等割が最低の7万円から18万円程度に上がりますので、注意が必要です。
(3)現物出資
役員からの借入金を現物出資して、増資することで、借入金を減らし、株式に変換できます。
①手続き
増資の手続きが必要で、登記が必要となります。
500万円を超える金銭債権の現物出資は、検査役の検査が必要となり、少し手続きが複雑になります。
②注意点
現物出資をしてもまだ債務超過である場合には、債務の評価額に注意が必要です。
(4)事例
では、ここで具体的な事例をご紹介したいと思います。
事例①:高齢の経営者。債務超過の状態が長らく続いており、欠損金も多額にあったケース
1億円の債権放棄をしてもらいました。
結果→会社は、法人税なし
相続税は、相続人がお子さん2人のケースなので、約770万円減額となる予定です。
事例②:長らく債務超過状態の会社。銀行からの要請もあり、債務超過を解消する必要があったケース
7,500万円の債権放棄と500万円の現物出資をしてもらいました。
結果→欠損金の範囲内で会社は、法人税なし
資本金は、500万円から1,000万円への増資で均等割も最低のままで、ギリギリ債務超過を脱出することができました。
(5)まとめ
債権放棄するには、赤字や欠損金のあるタイミングがが理想的といえます。
役員からの借入など、経営について相談したい時には、是非弊社へご連絡ください。