中小企業経営者、個人事業主の方にとっては、朗報となる中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針改正案が金融庁から示されています。
指針では金融機関に対し、経営者個人に信用保証を負ってもらう場合、具体的な理由を説明するよう義務付ける内容となっており、事実上、制限を加える規制となります。
(1)改正内容
- 契約時点における手続き
融資契約の際、金融機関は、保証人に対し説明をした旨を確認し、その結果等を書面又 は電子的方法で記録することが必要ある
2.契約時点における説明
保証人に対し、経営者保証ガイドラインに基づき、以下の点について、主債務者と保証人に対して丁寧かつ具体的に説明を行う必要がある
a.どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容(注)
b.どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まる か、個別具体の内容(注)
(注)「経営者保証に関するガイドライン」第4項(2)に掲げられ ている要素を参照の上、債務者の状況に応じた内容を説明。
その際、可能な限り、資産・収益力については定量的、その他 の要素については客観的・具体的な目線を示すことが望ましい。
(2)経営者保証ガイドラインとは⁉︎
「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており、法的な拘束力はないが、関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されているものです。
経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関にゆだねられています。
●経営者保証ガイドラインの3要件
- 資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
- 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
- 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている
上記3要件の全てまたは一部を満たせば
事業者は、
経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある
すでに提供している経営者保証に見直しができる可能性がある
金融機関は、
要件の充足度合いに応じて、経営者保証を求めないことや保証機能の代替手法(停止条件付保証契約※等)の活用を検討
※停止条件付保証契約とは、中小企業が特約条項(定期的な財務情報の提出義務、他の金融機関に対する担保提供の制限など)
に違反しない限り保証債務の効力が発生しない旨の契約
となっています。
(3)今後
監督指針は行政処分につながる手続きを記載するルールブックです。
必要があればヒアリングや検査を実施し、手続きに違反があったり企業とトラブルが起きたりすれば行政処分の対象になります。第三者保証を原則禁止したときと同じ規制の仕組みで、今回も経営者保証が姿を消す可能性があると言えます。
(4)まとめ
これまでこの経営者保証があることで、経営が立ち行かなくなった場合でも法人だけを清算することができませんでした。法人を清算するときは、同時に個人の破産もしないと債務は免除されない仕組みになってい他のです。
これは、法人の借入金に対して、経営者個人が保証していることで法人の債務がなくなっても、個人にその債務が代位弁済という形で降り掛かってくるためでした。
このことが、経営者が一度事業に失敗してしまうと再起することが難しくしていた理由です。
今後は、思い切ったチャレンジをし、失敗しても再起の道が開かれる可能性が高くなる一方で、金融機関としては、融資に慎重な姿勢を取ることも予想されます。
金融機関では、今までより多くのリスクを取ることになります。
このため、事業者側は、しっかりとした収益性や事業計画を示すことが必要となります。