年次有給休暇(以下、年休)の付与については、全労働日の8 割以上出勤していることという要件(以下、8 割要件)があります。
しかし、その計算の際に、会社の責に帰すべき事由によって休業した 日や育児休業を取得した日等のイレギュラーについて、どのように計算すべきか判断に迷うことはありませんか。
今回はその実務上のポイントを確認します。
8割要件の計算
8 割要件を満たしているかの計算は、出勤率を も っ て 判 断 し ま す 。こ の 出 勤 率 は 、出 勤 日 数 ( 算 定 期 間 の 全 労 働 日 の う ち 出 勤 し た 日 数 )を 全労働日(労働義務が課せられている日のこと で、就業規則等で定めた休日を除いた日数)で除して計算します。 出勤日数には、休日出勤した日は除く一方で、 遅刻や早退があったとしても、その日は出勤し ているため、含めます。
こ の 出 勤 率 を 計 算 す る 際 に 、分 母 の 全 労 働 日 か ら 除 外 さ れ る 日 と 、分 子 の 出 勤 し た も の と して取り扱う日が定められています。全労働日か ら除外される日数には、以下のものがあります。
- 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
- 正当なストライキその他の正当な争議行為により 労務が全くなされなかった日
例えば、新型コロナウイルス感染症の影響に より、会社独自の判断で従業員を休業させた場 合 は 1 に 該 当 し 、休 業 さ せ た 日 を 全 労 働 日 か ら 除外して、出勤率を計算します。 一方、出勤したものとして取り扱い、出勤率の計算の際に出勤日数および全労働日に含めるものとしては、以下のものがあります。
- 業務上の負傷・疾病等により療養のため休業 した日
- 労働基準法に規定する産前産後休業を取得 した日
- 育児・介護休業法に基づき育児休業または介護 休業した日
- 年次有給休暇を取得した日
例 え ば 、算 定 期 間 に お い て す べ て 育 児 休 業 を取得していた場合、休業日数を全労働日に含 み 、出 勤 し た も の と し て 取 り 扱 う 日 数 に も 休 業 日数を含むことから出勤率は10 割となり、実際 に勤務した日数がないとしても年休の付与を行 います。
特別休暇等の取扱い
会社独自の休暇である特別休暇や、育児・ 介護休業法による子の看護休暇・介護休暇を 取得した日等については、法令での定めはない た め 、そ れ ぞ れ の 会 社 で 出 勤 率 の 計 算 の 際 に どのように取り扱うかを決めることになります。 一般的には出勤したとみなして出勤率を計算す る方法が多くみられます。
出勤率を計算した結果、8 割要件を満たさなかった場合、その年については年休が付与されませんが、次の年に 8 割要件を満たした場合は、8 割要件を満たさなかった年も勤続継続年数に含 めて、付与日数が決まります。従業員にとって年休の付与や取得に対する関心は高いことから、誤りのないように管理しましょう。