今日は、経営計画を達成するために必要な要件をロケット理論になぞらえて見ていきたいと思います。
⑴人類はなぜ月に行けたのか?
人類が月へ到達した理由は「ロケット理論」と呼ばれる考え方で説明できます。
「なぜ、人類は月に行くことができたのか?」
その大きな要因のひとつは、「月へ行く」という明確な目標を持ったことにあります。偶然、月にたどり着くことはありません。これは経営においても同じで、目指すべき方向性がはっきりしていなければ、望む成果は得られないのです。
では、「明確な目標」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?ここでは2つのポイントに絞ってご紹介します。
①誰が見ても明確な目標
1つ目は「誰が見ても明確」であること。たとえば、社員に「売上を上げろ」と声をかけるだけでは、前年比か前月比か、人によって解釈が異なります。そのため、目標は数字を用いて明確化することが大切です。数字は世界共通の言語なので、曖昧さを減らし、全員が理解しやすくなります。
②全員が理解できる目標
2つ目は「全員が明確」に理解できること。せっかく立てた計画書を本棚や机の中にしまい込んでいては意味がありません。全社一丸となって目標達成に向かうためには、経営者が自らの言葉で、計画に込めた想いを伝える必要があります。
そのためには、計画書を全社員に配布したり、経営計画発表会を開いたり、社内で誰もが目にする場所に掲示したりといった工夫が効果的です。社員全員が同じ目標を共有し、同じ方向を目指すことで、5年後の理想像に近づく道筋がはっきりと見えてきます。
「誰が見ても明確な目標」と「全員が理解できる目標」。この2つのポイントが、強い組織をつくり、理想の未来へと導くための鍵なのです。
⑵方法論の具体化
第二の要件は「方法論の具体化」です。
人類が「月へ行く」という目標を掲げたとき、その次に問われたのは「どうやって月へ行くか」という方法でした。さまざまな実験を通して手段を具体化した結果、実際に月面着陸が実現しました。
これは経営にも同じことが言えます。目標が明確であればあるほど、具体的な方法を設計することで、その実現可能性は大きく高まります。
ここでは、方法論を具体化する際の2つのポイントをご紹介します。
①実行する人が主体となる「ボトムアップ」方式
1つ目は、方法論の具体化を「実行する人が主体となって行う」ということ。つまり、社員参加型のボトムアップ方式です。
トップダウンで目標を押し付けられた場合、社員には「やらされている感」や「ノルマ感」が生まれやすくなります。さらに、社長がすべての意思決定を下すと、社員は社長に依存し、自ら考え行動する力が育ちません。
ボトムアップ方式であれば、現場の声を反映しやすくなり、社員自身が「自分ごと」として捉えられるため、実行力とモチベーションが高まります。
②5W1Hでアクションプランに落とし込む
2つ目は、方法論を「5W1H」に落とし込んでアクションプランとして明文化することです。
When(いつ)
Where(どこで)
Who(誰が)
What(何を)
Why(なぜ)
How(どのように)
これらを明確にすることで、誰が何をすべきかが明らかになり、実行段階での迷いがなくなります。
これまで、「明確な目標」と「方法論の具体化」という、目標達成に必要な3つの要件のうち2つをご紹介しました。古くから「志立ちて半ば成就」という言葉があるように、目標と方法が定まれば、その時点で半分は成功したも同然です。
では、残りの50%を決める要件は一体何なのか?
⑶軌道修正の仕組み
目標達成の第三の要件は「軌道修正の仕組み」です。
「月へ行く」という明確な目標を掲げ、方法論を具体化した人類。しかし、いざ実行に移すと、思い通りにはいかないことが多々ありました。想定外のトラブルや新たな課題が次々と現れたのです。
そんなとき、人類は計画を見直し、軌道を修正し続ける仕組みを持っていました。この柔軟性こそが、最終的に月面到達を可能にした最大の理由なのかもしれません。
これは、経営にもまったく同じことが言えます。目標を掲げ、それに向かって走り始めたとしても、必ずしも計画通りには進みません。だからこそ、タイムリーに目標とのズレを把握し、即座に改善策を打てる仕組みが必要です。
ここでは、軌道修正の仕組みを整えるための2つのポイントをご紹介します。
①ポイント1:ズレがタイムリーにわかる仕組み
計画とのズレが3ヶ月経ってから判明しても、その時点での修正は難しくなります。
だからこそ、自社経理をしっかり行い、毎月・毎週、あるいは毎日のように数字をチェックできる体制を整え、「今、どれくらい目標から外れているのか?」を即座につかむことが重要です。
②ポイント2:ズレを改善する仕組み
ズレがわかったら、すぐさま対策を考える場をつくることが大切です。おすすめは、月初めに「いちげつ会議」(※月1回行う改善会議)を開催し、ズレを補正する具体的な手立てを議論すること。
このような定例会議を設定しておくことで、チーム全体が常に目標と実績のギャップを意識し、迅速な軌道修正に取り組めるようになります。
⑷まとめ
「ロケット理論」における目標達成の3要件、
①明確な目標 ②方法論の具体化 ③軌道修正の仕組み
この3つを経営に取り入れることで、皆さまの企業はより確実に、そして柔軟に目標へと近づくことができるはずです。ぜひ、日々のマネジメントで意識してみてください。