社会保険の適用拡大 | かなえ経営株式会社(税理士法人トレイス)

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社会保険の適用拡大

社会保険の適用拡大

筆者:税理士 佐野 元洋
"中小企業の経営参謀"

2024年10月1日から社会保険の適用対象企業が拡大されます。

⑴経緯

●短時間労働者への被用者保険の適用については、長らく、所定労働時間及び所定労働日数が通常の就労者のおおむね4分の3以上であるかどうかにより判定するという運用が行われてきました。

 短時間労働者への適用拡大については、平成12(2000)年、平成16(2004)年の年金法改正時にも検討されたものの改正に至らず、また、平成19(2007)年には適用拡大を一部盛り込んだ法案(被用者年金一元化が主な内容)を提出しましたが、廃案となった経緯があります。

 こうした中、平成24(2012)年の改正では、①週労働時間20時間以上、②月額賃金8.8万円以上、③勤務期間1年以上見込み、④学生は適用除外、⑤従業員500人超の企業、という5つの要件の下で、短時間労働者への適用拡大を図ることとなり、2016年10月から施行され、さらに、平成28(2016)年の改正では、2017年4月から、500人以下の企業で、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を行うことが可能となりました。

●令和2(2020)年年金法改正では、平成24年改正で設定された適用拡大の5要件のうち、勤務期間1年以上見込みの要件を撤廃するとともに、企業規模要件を、2022年10月から100人超規模、2024年10月から50人超規模に引き下げ、被用者保険の適用範囲を拡大することとしました。

 このうち、当初、企業規模要件については、平成24年改正法附則の当分の間の経過措置であることから、要件そのものを撤廃することが目指されたましたが、中小企業の経営への配慮の要請もあり、令和2年改正では、企業規模要件を撤廃した場合の約半数が新たに適用になると見込まれる50人超規模までの企業を対象とすることとしました。

 また、令和2(2020)年改正では、短時間労働者に対する勤務期間要件を撤廃することとし、2022年10月からは、雇用期間に基づく適用の判断に当たっては、短時間労働者もフルタイムの労働者と同じ取扱いがなされることとなります。なお、同改正により、雇用期間が2か月以内の場合であっても、当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないことが確実な人以外については、当初から被用者保険が適用されることとなりました。

⑵従業員のカウント方法

従業員数は、以下のA+Bの合計

A:フルタイムで働く従業員数

B:1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数

※従業員には、上記要件を満たす正社員や有期職員等だけでなく、パート・アルバイトも含みます。

原則として、従業員数の基準を常時上回る場合(※)には、適用対象になります。

※厚生年金保険の被保険者の総数が12ヶ月のうち6ヶ月以上基準を超えることが見込まれる場合を指します。

法人は、法人番号が同一の全事業所の従業員数を合計して、個人事業所は個々の事業所ごとにカウントします。

⑶対象となる従業員の要件

①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満

※フルタイムで働く従業員の所定労働時間を40時間の企業の場合

契約上の所定労働時間であり、臨時に生じた残業時間は含みません。

②所定内賃金が月額8.8万円以上

基本給と手当の合計額です。

残業代、賞与、通勤手当、臨時的な賃金等は含みません。

⑷影響

ではどのくらいの影響があるか見ていきましょう。

月額10万円程度のパートさんが、週20時間以上で対象となる場合。

このパートさんが加入した場合、会社としては厚生年金・健康保険の合計14,033円

がパートさんの給与から天引きされるとともに、同額会社が負担することになります。

10名いると 14,033円×10人=140,330円 月々負担が増加します。

年間では、1,683,960円の負担が増えることになります。

⑸まとめ

パート・アルバイトを多く抱える企業にとっては、かなりの負担が増加する改正となりますので、しっかりと人件費の増加を把握して計画を立てましょう!

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