査察の概要 | かなえ経営株式会社(税理士法人トレイス)

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査察の概要

査察の概要

筆者:税理士 佐野 元洋
"中小企業の経営参謀"

国税庁から査察の概要というものが発表されています。

⑴税務調査と査察の違い

税務調査

目的: 主に納税者が適正な申告を行っているか確認することを目的としています。

誤りや漏れがないかを確認し、誤りがあった場合には修正申告をする必要が生じます。

手続き: 通常、事前に通知されることが多いです。調査の対象となる期間や範囲が明示され、納税者や税理士と調整の上で行われます。

対象: 個人事業主、法人、相続人など、すべての納税者が対象となります。

対応: 調査の結果、誤りや不正が見つかった場合、追加で納税が求められたり、場合によっては罰金が科されることもあります。

査察

目的: 税金に関する犯罪行為(脱税や詐欺など)の証拠を集めることを目的としています。違法行為が疑われる場合に行われる厳しい調査です。

手続き: 多くの場合、予告なしで行われます。査察官は裁判所の許可を得て強制的に立ち入り、証拠を収集します。

対象: 脱税や詐欺などの重大な税法違反が疑われる個人や法人が対象となります。

対応: 違反が確認された場合、刑事告訴が行われることがあり、罰金や懲役などの刑罰が科される可能性があります。

主な違い

目的の違い: 税務調査は適正な申告の確認、査察は犯罪行為の証拠収集。

手続きの違い: 税務調査は通常予告あり、査察は予告なし。

結果の違い: 税務調査は追加納税や罰金、査察は刑事告訴や刑罰の可能性。

どちらも重要な調査ですが、査察の方がより厳しい法的措置を伴うことが多いです。

査察の概要

①総括

検察庁に告発した件数は101件、脱税総額(告発分)は89億円 悪質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施し、101件を検察庁に告発しました。告発した査察事案に係る脱税総額は89億円であり、1件当たりの脱税額は88百万円でした。告発率は66.9%となりました。

②取組

消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、社会的波及効果の高い事案を積極的に告発 消費税事案では、同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造することで、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上を計上していた事案や、コンビニエンスストアで販売していた免税商品について、虚偽のパスポート情報を用いることで、架空の輸出免税売上を計上していた事案などの不正受還付事案を告発しました。 また、アフィリエイト事業により収入を得ていたにもかかわらず、虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして所得を隠匿した上で、確定申告書を提出していなかった事案などの無申告事案を告発しました。 そのほか、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって、広く納税者に利用させていた脱税請負人事案や、違法な方法で未公開株式を売却して得た収入を海外法人の収入と装っていた大規模な事案などの社会的波及効果の高い事案を告発しました。

重点事案への取り組み

消費税事案    

○ 同一の高級腕時計のシリアルナンバーや不正に入手したパスポートの写しを用いて書類を偽造し、架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした。

○ 輸出物品販売場の許可を受けたコンビエンスストアにおいて、虚偽のパスポート情報を用いて免税商品を販売したと装い、架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受け、又は受けようとした。 

○ 虚偽の不動産売買契約書を作成して、不正加担法人から航空機格納庫を購入したと装い、架空の課税仕入れを計上することで、不正に消費税の還付を受けようとした。 

○ 不正加担法人からキャッシュレス決済端末を仕入れたと装い、架空の課税仕入れを計上するとともに、資金を循環させて架空の輸出免税売上を計上することで、不正に消費税の還付を受けていた。

無申告事案

○ アフィリエイト事業により収入を得ていたにもかかわらず、虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして所得を隠匿した上で、法人税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、法人税を免れていた。 

○ タトゥースタジオを経営するとともに、自らタトゥーの施術を行うことで収入を得ていたにもかかわらず、知人や親族名義の預金口座を使用して所得を隠匿した上で、所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、所得税を免れていた。

○ 所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ、出版社からの原稿料や印税収入などに係る所得税を免れていた。

社会的波及効果の高い事案

○脱税請負人が、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって、広く納税者を勧誘し、納税者らが当該スキームを利用して法人税及び消費税を免れていた。 

○インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が、架空の経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税及び主宰法人の法人税を免れていた。 

○半導体製造工場の建設が盛んな地域における工場内設備工事事業者が、架空の経費を計上することで、法人税及び消費税を免れていた。

○コロナ禍におけるペット需要の高まりを受けたブリーダー業を営む者が、架空の経費を計上することで、所得税を免れていた。

不正資金の留保・費消状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていましたが、脱税者が数千万円規模の費消をしていた事例も見られました。 

その使途としては、 

○ 高級車両の購入 

○ 有価証券等への投資 

○ 暗号資産の購入 

○ 競馬や海外カジノ・ネットカジノ等のギャンブル 

○ 飲食等の交際費・遊興費 などがみられました。 

また、脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、 

○ 天井裏 

○ 階段下収納 

○ 蔵に置かれた木箱 

○ 銀行の貸金庫 に現金を隠していた事例などがありました。

⑸まとめ

令和5年度中の一審判決は83件であり、全てに有罪判決が言い渡され、そのうち9人に実刑判決が出されました。なお、実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独で懲役4年、他の犯罪と併合されたもので懲役6年でした。

査察事案になるとほぼすべてが有罪となります。

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