役員に対する賞与の支給は可能? | かなえ経営株式会社(税理士法人トレイス)

ブログ

役員に対する賞与の支給は可能?

役員に対する賞与の支給は可能?

筆者:税理士 佐野 元洋
"中小企業の経営参謀"

役員に対して支給する賞与は、原則として損金不算入つまり経費になりません。
でも事前に届け出を出しておけば経費に算入できます。

⑴事前確定届出給与

事前に届け出を提出しておけば、経費として認められる制度を事前確定届出給与と言います。
①要件
株主総会での決議により、以下のいずれか早い方の日にちまでに届け出が必要です。
(イ)株主総会の決議をした日から1ヶ月を経過した日
(ロ)決算日から4ヶ月を経過する日
(ハ)新設法人の場合は、法人設立の日から2ヶ月を経過する日

②記載事項
(イ)決議を行った日及び機関等の名称
(ロ)執行開始日及び届出期限
(ハ)対象者氏名及び役職名、職務執行期間、支給時期と支給金額
このように支給時期及び支給金額を明確にする必要があります。

⑵注意点

とても便利な制度ではありますが、その運用には注意点があります。
事前確定届出給与は届け出たとおりに支給しなければ、全額が損金不算入になってしまいます。
例えば、500万円を3月31日に支給すると届出していて、資金繰りの都合上300万円しか支給しなかった場合には、その300万円は全額損金不算入つまり経費とはなりません。
また時期についても注意が必要です。
3月31日に支給するとしていて、今月は資金繰りが厳しいので1ヶ月ずらして4月30日に支給したとしても全額損金不算入となります。

⑶臨時改定が認められる場合

役員の職制上の地位の変更や、職務の内容に重大な変更があった場合(臨時改定事由)、会社の経営状態が著しく悪化した場合(業績悪化改定事由)には、事前確定届出給与の改定が認められます。
事前確定届出給与の金額を変更する際には、所轄の税務署に事前確定届出給与に関する変更届出書の提出が必要です。なお、業績悪化改定事由により事前確定届出給与を変更する場合は、一時的な赤字や資金繰りの悪化では認められないこともあるため、十分な注意が必要です。

⑷活用方法

①社会保険料の負担軽減
月額の役員報酬を引き下げてその分を事前確定届出給与(賞与)で支給することにより、社会保険料を圧縮することができます。
例えば月額100万円の役員報酬を取っている役員が、月額報酬を10万円に引き下げ、事前確定届出給与を1,080万円支給することで年収は変えずに、社会保険料が75万円下げることが可能となります。

②決算対策
事前確定届出給与は人ごとに設定します。
複数役員がいる場合に限られますが、
例えば、A役員 300万円 B役員200万円 C役員100万円
という事前確定届出給与を期末に設定していたとします。
利益が500万円出ていて、全員支給すると赤字になってしまうというような場合に、
BとCのみを支給し、Aには支給しないとすることで、200万円の黒字を確保することが可能となります。

⑸まとめ

このように事前確定届出給与は、その適用は厳格ではありますが、活用の仕方はいろいろとあります。
ぜひ、みなさんの会社でもご検討ください。

この記事をシェアする
トップへ戻る