(1)所得税基本通達の改正について
2022年8月1日、国税庁は、『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)』に対する意見公募手続きを開始した。期間は、8月31日までとなっている。
その内容は、以下の通りである。
次に掲げるような所得は、事業所得(注)又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。
(注)事業所得と業務に係る雑所得の判定は、その所得を得るための活動が、 社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定するのであるが、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る 収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証のない限り、業務に係る雑所得と取り扱って差し支えない。
となっている。
つまり、これまで副業の収入を事業所得として申告し、青色申告特別控除(65万円、55万円、10万円)を受けたり、副業収入で出た損失を本業の給与収入から差引く損益通算をして、所得税の還付を受けていた方々にとっては、副業の年間収入(売上)が300万円超ないと今までの恩恵を受けることができなくなるということである。
今後は、この年間収入が300万円を超えるかどうかをチェックされ、いくら開業届や青色申告承認申請書を提出したとしても、事業としては認められなくなるということである。
(2)雑所得とは?
①雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当する。
②雑所得の金額は、次の(イ)から(ハ)の合計額です。
(イ) 公的年金等
(ロ) 業務に係るもの
(ハ) (イ)(ロ)以外のもの
(ハ)の例としては、以下のようなものがある。
- 法人の役員等の勤務先預け金の利子で利子所得とされないもの
- 学校債、組合債等の利子
- 定期積金に係る契約などに基づく給付補填金
- 税金の還付加算金
- 法人の株主等が株主等である地位に基づきその法人から受ける経済的な利益で、配当所得とされないもの
- 生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等、相続等に係る生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算
- 就職に伴う転居のための旅行の費用として支払を受ける金銭等のうち、その旅行に通常必要であると認められる範囲を超えるもの
- 役員又は使用人が自己の職務に関連して使用者の取引先等からの贈与等により取得する金品
上記は現状「雑所得の例示」とされているが、改正後は、「その他雑所得の例示」として分類されることになる。
(3)暗号資産取引による所得
上記の「その他の雑所得」に“譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得”が含まれると明記されているため、暗号資産取引による所得は「その他の雑所得」に含めて計算、申告することになる。したがって、暗号資産の収入を含めて300万円を超えたとしても事業所得とは認められないことになる。
(4)今後の対応
今後は、
①しっかりと年間300万円超の収入を上げる(収入=売上なので、単価の高い物を取り扱うなど)
②雑所得(副収入の利益)を20万円以下に抑えて、申告不要とする
のどちらかの対応を迫られることになる。