政府方針では、2030年代半ばまでに全国加重平均で最低賃金を時給1,500円まで引き上げるとしています。
つまりあとこれからの10年間は最低賃金が毎年約50円ずつ上がるという計算になります。
労働者にとってはありがたい話ですが、中小企業経営者にとっては気の重くなる話です。
今日は、最低賃金が上がることによってどんな影響が出るのか見ていきましょう。
⑴人件費の増加
当然直撃するのは、人件費です。
パート、アルバイトの給与だけではなく、正社員の給与も増加します。
派遣社員や契約社員の単価もアップします。
正社員やフルタイムのパートさんの給与が上がるに伴い、社会保険料の負担も増加します。
さらには、雇用保険料や労働保険料の負担も増加することになります。
⑵パート・アルバイトの時間減少
時給単価が上がるということは、扶養の範囲内で働こうとしている主婦のかたなどは、時給が上がるにつれて調整で働く時間を短くされることになります。
例えば時給1,000円の方が103万円目いっぱい働ける時間は、年間1030時間ですが、時給が50円アップして1,050円になると働ける時間は980時間となり、50時間少なくなります。
その分を誰かがカバーしないといけなくなり、残業代が増えたり、余分に1名採用したりすることになります。
⑶価格転嫁の必要性
人件費の増加に伴い、企業は商品やサービスの価格を上げざるを得ない場合があります。しかし、消費者や取引先がその価格上昇に応じてくれなければ、競争力が低下する可能性もあり、売上に影響を与えることがあります。
⑷効率化のための設備投資
人件費が高騰することで、企業としては自動化やデジタルツールへの投資を進める必要が生じます。これにより、長期的にはコスト削減や業務効率の向上が図られるものの、初期投資が中小企業にとっては負担となる可能性があります。
⑸人材の定着やモチベーションの向上
人件費が上昇することで、従業員の離職率が低下し、定着率が向上する可能性もあります。これは、特に低賃金の職場において従業員のモチベーション向上やパフォーマンス向上に繋がることがあります。
ただし、世間相場を常に見ておかないと周囲と比べて低い水準である場合には、人材の流出につながる可能性もあります。
⑹生産性の向上
高い給与を支払うためには、生産性の向上が必須となります。
単価、粗利額の高い仕事にシフトし、可能な限りの効率化を図り、工数削減を常に意識する必要があります。
DXの推進は、中小企業にとっては待ったなしの状況といえます。
⑺まとめ
中小企業にとっては、人件費の増加は厳しい経営環境ではありますが、付加価値の高い仕事へシフトし、業務効率化を図るチャンスと捉えることもできます。
この変革を成し遂げることができた企業は、間違いなく生き残ることができる企業となります。